腕時計というファッションアイテム

腕時計の役割は、もちろん時刻を確認することにある。

しかし誰もが携帯電話や、それに類するガジェットを当たり前に所持しているこの時代。出先で「時刻を確認する」という意味においては、腕時計の存在意義はかつてよりずっと低くなったかもしれない。

では腕時計の価値はなくなったのだろうか?もちろん否だ。決して今に始まったことではない、腕時計は古くからのファッションアイテムの一つだ。

値の選択肢も広く、贈り物としても外さない。元来がツールなのだからどんな人が付けていたって文句を言われるものでもないし、あらゆる性別・年代においてもその人に合う一品が必ずある。タイ、シューズ、帽子、眼鏡、ネックレス……。いずれを見ても、腕時計ほどに万人に開かれたファッションアイテムはそうそう存在しないだろう。

もちろん選び方は他のファッションアイテムと同様に重要だ。腕時計ほど天井知らずの高級品もなかなかないが、衣服で言うところの「着せられてる」といったような無粋は避けたい。そのために知識を蓄えることは必要だが、高級品を選ぶのであれば前もって勉強するのは当たり前だ。逆に廉価を取るのであれば、フィーリングで楽しく選ぶのもいいだろう。これは腕時計だからではなく、買い物という行為の当たり前だ。

冒頭で示したとおり、腕時計本来の役割を発揮する場面は携帯電話たちに取られていった。腕時計をつける人が少なくなったのは否定できない現実だろう。あるいは、これからさらに少なくなっていくのかもしれない。

しかし、だからこそ、とも言えるのではないだろうか。人間、誰だってその他大勢とは一味違う存在でいたいものだ。今の時代だからこそ、腕時計というアクセサリはその欲求をスマートにかなえてくれる。決して奇抜な悪目立ちするアイテムなどではなく、それでいて静かに他人と差をつけられる。

一見には時代に押されて役割を終えた腕時計。しかし、彼らが真のポテンシャルを発揮するのは、むしろこれからなのかもしれない。